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第23回
日経エデュケーションチャレンジ for SDGs
優秀リポート発表!

高校生たちに課題リポートを募集し、コンテストを実施した。テーマは「私が叶えたいこと」。 授業の感想に加えて、これからの持続可能な社会の実現へ向けてどう考えるか、これからの社会のために自分が実践すべきことをまとめてもらった。寄せられたリポートからは、今回の授業が生徒たちの知的好奇心を刺激し、これからの高校生活や進路を考える上で大きな判断材料の一つになったことがうかがえた。

優秀リポート

  • 會澤 紅緒さん

    茨城工業高等専門学校 2年

     何事にも興味を持ち、積極的に行動できるところが自分の強みだと思っていた。1年生の頃から部活動とアルバイトに取り組み忙しい日々を過ごしていた。2年生に上がりそんな生活にも慣れてきた頃夏休みに入り、他校の友達と遊びに行くことが増えた。自分の学校は5年制で将来のことなどまだ考えていなかったが、周りの友達は高校2年生。将来について考える時期だ。学校が専門的なことを学ぶため、将来について聞かれることも多々あったが曖昧な返事しかしていなかった私は周りの将来設計の高さに圧倒された。そして、とても焦った。自分が何をしたいのか、何を目標に学んでいるのか、就職をしたいというのは思っていたがどんな職種に着きたいのか、全くと言っていいほど決まっていなかった。夏休みで時間に余裕ができ、時間があったものの、片手には常にスマホ。定位置はベッド。果たしてこれでいいのかそんな思いが芽生え、悩んでいた。そんな時学校からのメールでエデュチャのお知らせが来た。これだ。私はすぐに申し込みをした。
     講義を見ていく中で講義をしてくださった方々に共通する部分があった。それは、仕事を「やるべき事」「お金を稼ぐこと」ではなく、「やりたい事」として働いている事だ。もしかしたらやりたかったこととは違う職業かもしれない。ただ、自分で選んで就職したであろう現在の職業に誇りを持っている姿に感銘を受けた。自分が10年後そんな思いで働いているのか、不安は大きい。でも、こんな姿でありたい。そう思わされた。
     地球の環境問題について、この問題はとても途方のないでも1番身近な問題だと思う。そんな問題に対して「自分ごと」として真剣に向き合って仕事をしている方々の話を聞き、思わずはっとされた。確かに学校でもテレビでも大きく話題に挙げられているがどこが他人事だという思いがあった私は、「そのうちやれば」、「こんなのやったところで」という思いから行動できていなかった。だから、夏ならクーラー冬はコタツがつけっぱなしの状態。服装を変えたりタイマーを使って寝てる間は消したり、些細なことで大きく変化していくことを大事に、明日からじゃなくて今からできることをやっていこうと思う。
     最もハッとさせられたのは、災害のあとの災害廃棄物の処理の話だ。確かに言われてみれば復興とは再構築だけでなくその前に復旧をしなければいけない。それを誰がやるのかなんて考えたこともなかった。「他人事」だったのだ。少しの知識で災害について知った気になっていた自分が恥ずかしくなった。そして、すぐに奥村組の取り組みについて調べ始めた。そして、会社全体での取り組みの速さややるべき事の明確さに驚いた。全員が復旧、復興のためにできることを協力して取り組んでいる。これこそ、一人一人の小さな力の積み重ねが大きな力になるということだと思った。思うだけでは何も始まらない。「自分ごと」としては考えて1歩を踏み出すことで未来へと繋がるのでは無いか。
     エデュチャに申し込んで良かったと思っている。今までは他人事としてみていた地球問題や今後の将来について、そしていま自分に出来ることについて見直すいい機会であった。エデュチャを企画してくださった方々、そして講義をしてくださった方々に感謝しなければならない。今後、この経験を活かして寄り良い未来のために行動していきたい。

  • 阿部 ののかさん

    東京都立晴海総合高等学校 2年

     Z世代と呼ばれる私たちは、小中学校の頃から学校でSDGsを学ぶ機会が多かった。そこではSDGs17の目標の様々なテーマを扱ってきた。どれも違うジャンルで、貢献するための行動も多種多様だった。そこで私は、「今までたくさんの知識を身に付けてきたが、私たちにできることは結局何なのだろう」という疑問を抱いた。そこで、その疑問を解決するために今回の日経エデュケーションチャレンジに参加した。
     講義の前に、一條校長の始業式があった。そこではSDGsを学ぶとはどういうことなのか、一條校長が教えてくださった。「これからの社会を創り、変えていくのは君たちだ。」この言葉を聞いた私は、自分はもうすでに社会の一員であり、今の私にもできることがたくさんあるということを自覚した。
     今回、様々な企業の講義を聞いて、目標につながる信念を持ち、自分たちに今できることは何なのかを考え行動することがどれだけ重要かを知った。今まで学校でSDGsについて考えるとき何をすればこの問題を解決へ導けるか、ということばかりに囚われ、自分がどうしたいのか、という感覚を持ってこなかった。それはSDGsが私自身の生活には関係しない、どこか他人事のような遠い存在に感じていたからだ。また、SDGsを達成するための大きな目標に対して、失敗するかもしれない。自分にはこんなことできない。と思うことが多かった。しかしそれは間違っていた。ニッタの中谷さんは、「人には皆、失敗をする権利がある。」そう言っていた。マイナスで漠然とした考えを持っていた私はこの言葉に衝撃を受けた。大きなことでなくてもいい。小さなことから新しい発見を学びに変えていく。それは学校生活や進路活動の中でも実践することができる。まずは自分で一歩踏み出す、それこそが持続的で理想的な社会を創る第一歩となるのだ。
     講義を聞き終えた私は、今まで自分が思っていたよりもずっと将来性のある社会を知れたことに大きな喜びを感じていた。個々の行動が重要になってきた今の時代、私の日々の選択が持続可能な未来へとつながることが、今までSDGsを身近に感じることのできなかった私にとってとても嬉しいことだった。そして今回のテーマである「私の叶えたいこと」について改めて考えた。近年、SDGsに貢献する為の取り組みが多く実施されてきたおかげで「SDGs」という言葉を聞いたことのある人が多くなった。しかしその実態を知る人は少ないのが現状だ。
     私は、SDGsを当たり前に考え、その目標に向けて一人一人が行動することのできる社会を創りたい。誰もが豊かな創造性を持ち、人それぞれに最適な環境貢献社会を。
     そのためにこれから育む様々な学びや経験から感受性を高め、社会の変化に関心を持ち、社会を創る為の「行動」を起こせる大人になりたい。そうして、私の持つ大きな経験という財産を持続可能な未来へと変えていくのだ。

  • 緒方 秀真さん

    佐賀県立鳥栖商業高等学校 3年

     私は商業高校に進学し、周りは就職など卒業後の進路が明確であるなか特に希望がなく焦りを感じていた。学校生活が始まり、専門科目である「簿記」や「ビジネス基礎」の授業を受けて企業の経営分析や経済の流れについてより興味を持つようになった。経営分析や企業と地域社会との関わりについてもっと深く学びたいという思いから、将来は大学に進学し世界に誇れるような地元の産業を経済的観点から支援していけるような人材になりたいと考えるようになった。そこで今回は社会の最前線に立っている先生方の授業を聞き自分の将来に生かせたらいいなといった軽い気持ちから受講を決意した。
     学校の授業でSDGsについて知り、私の中では企業が取り組まないといけない面倒くさいものといった印象しかなかった。しかし今回フクダ・アンド・パートナーズの福田先生の話を聞いてSDGsに対する考えが変わった。企業はもともと利害関係者によって支えられているものであり、その利害関係者の中にはもちろん地方自治体も含まれる。そこで、普段支えてもらっている地域の方たちと共創して新たな価値を生み出していくという考え方にすごく納得をした。東日本大震災を経験された時に生まれた思いとして「物流施設は日常的に人々の生活を支えるインフラであり、災害時には人の命を守るライフラインになる」ということを存在意義にしているとおっしゃっていた。フクダ&パートナーズの存在意義を聞き企業がある目的が利潤の追求だけであるという考えから、より広い人に信用してもらえるような企業になることで自然と利潤はついてくるといった考え方に変わった。また持続可能な社会を形成していくためにも地域住民との協力は必要不可欠なものだと感じた。
     持続可能な社会を実現するための取り組みとして、環境の保護や管理、社会的公正と平等、経済の持続などがあげられる。これらの目標を達成するためにも個人、地域、企業や政府との協力は欠かせないものだと感じた。
     私は最近自分の地元である佐賀の産業について興味を持ち始めた。佐賀の名産物として有名な養殖のりは日本全国のおにぎりやすしなどに使われておりいまでは生活で欠かせないものとなっている。佐賀の養殖のりに関わらず日本国内の各都道府県でそれぞれ人々の暮らしを陰ながらも支えているものがある。各都道府県の産業の中には生産者が過疎化の影響から減少し衰退していっているものもある。実際に現在佐賀県では進学や就職を機に県外へ進出する人が多く、80万人を下回るともいわれている。県内の人口減少の影響から地元の産業が衰退していくことも懸念されている。私はこういった佐賀県の産業を立て直し、地域経済を活性化していくことで自分が生まれ育ててもらった佐賀県の未来を作る支援をしていきたい。そして既存の地場産業だけでなく、今まで学んできたことを活かして新たに佐賀県で産業を始めようとしている人たちの手助けができるような人材となりたい。

  • 中村 彩花さん

    石川県立野々市明倫高等学校 3年

     私は始業式で一條和生先生の「SDGsは世界中の人が、国が、会社が、個人が取り組むべき課題だ」,「世界の未来、自分の未来を考えてみて欲しい」と言う言葉を聞いた時私はもちろんSDGsは全ての人が向き合うべき重要な課題だと思うけどいったい何十億分の一の自分には、何ができるのだろうかと思いました。そんな私でしたが今回日経エデュケーションチャレンジに参加し様々な分野の方の授業を通してSDGsに対する考え方を大きく変えることができました。それは、SDGsは世界中で、国が、社会全体が、会社が、そして何よりも私たち一人一人が主体性を持ち考え行動することが重要だということです。地球に住むより多くの人がSDGsの取り組みについて知り行動することで社会を少しずつでも変えることができ世界全体が変わっていくと感じました。1人でやっても意味がない、ではなく「自分」が行動して変えていく、解決するといった気持ちを持つことが大切だと思いました。
     近年社会ではさまざまな会社が多様な分野でSDGsに取り組んでいますが、私はフクシマガリレイ株式会社の新名先生の「冷やすものづくりから地球温暖化を食い止める」と言う授業を聞いてとても興味深いなと思いました。新名先生の授業は先生が行っている大型冷蔵庫の設計を通して、地球温暖化を食い止めることに挑戦しているといった内容のお話でした。私の夢は将来、大学で機械工学について学び、機械に関する知識や技術を身につけて、就職してからは大学で学んだことを活かして機械の設計・製作をすることで人々の生活を支えられるものを作り社会に貢献することでした。しかし私は機械工学という分野では人を支えられるものは作れても環境問題の直接的な解決につながるものを作ることは難しいと思っていました。そのため今回先生の授業を聞いて工学という分野で環境問題やSDGsの目標を達成などに貢献できることを知ってより工学に興味が沸き、学びたいという気持ちが強くなりました。また私の夢が、環境問題を改善できるようなものづくりを通して人々の支えとなる機械を作りたいというものに変わりました。
     そしてふと一條先生からの「これからの社会ではさまざまな業種のさまざまな立場の人がSDGsに向き合っていく」という言葉を思い出しました。初めて聞いた時はあまりピンときませんでしたが授業を通し、私たちは持続可能な社会の実現を目指すSDGsの取り組みにおいて、「自分が目指す未来」という視点からSDGsを考え多様な方法で向き合っていくことが大切だと考えました。そして私たち学生ができるSDGsの取り組みは、目標について知り、自分はどのような形で取り組みたいのかを考えていくことだと思いました。今回エデュチャに参加して今までとは違うSDGsとの向き合い方に気づき自分の将来についての目標が広がりました。

  • 野添 葉音さん

    法政大学国際高等学校 3年

     「障がいの就労の概念を覆し、チャリティーからチャンスに変えたい。」地球市民誰1人残らず、やりがいを持って活躍できる社会を創りたい。私は、二日間の授業を終えて、この思いが脳内から離れなかった。日経エデュケーションチャレンジでの時間は、確実に私の心に火をつけた。私には、救急車のサイレンさえ聴こえない重度の聴覚障がいがある母がいる。話すことは不可能と言われた母だったが、目まぐるしい努力を重ね、今では流暢に会話をすることができる。そんな努力家の母が、人生で唯一乗り越えられなかったのが”就労の壁”だった。聴覚障がいに限らず、障がい者の門戸は狭く、就職できても職場定着で困難を抱える人が多くいる。私は障がい者就労の問題の現状に悔しさを覚え、この問題への理解を深めるため、有識者150人以上と対談を行った。現在は、聴覚障がいのある議員へのインタビュー記事の執筆や学生団体を設立し、ディスカッションイベントSNSでの啓発活動にも挑戦している。私は、これまで多くの障がい者と関わってきた中で障がいへの理解を広める必要性を痛感し、様々な手段で社会に発信してきた。しかし、啓発だけでは理解浸透に限界があるとも身をもって痛感している。そんな私にとって、先生方が口を揃えて「自分ごととして考えることが大切だ」と仰っていたことが忘れられない。なぜなら、障がいについても自分ごととして捉えることが大切だと言えると気付かされたからだ。障がいとは、社会状況とも密接に関係し、個人の領域を超えて社会的かつ文化的な問題が潜在していることもある。誰しも高齢者になったら心身共に困ることがあるだろう。だからこそ、自分ごととして心のバリアフリーを持つ人を一人、二人と増やしていきたい。そして、ニッタの中谷先生の「1人でできなくてもいい。色々な方に頼ってみることやアドバイスをもらうことが大切。」という言葉が心に響き、残りの夏休みで有識者の方々にさらにお話を伺った。夏の活動を通して、今年12月にとある財団のイベントで基調講演として障がい者の就労問題について提言する機会もいただいた。正直、社会に出ていない高校生の私が世の中に伝えられることはあるのだろうかと不安もある。しかし、高校生の視点だからこそ、凝り固まったステレオ的な概念を打ち破ることができるかもしれないとも思っている。私は、UACJの大町先生の「高校生だからこそ伝えることができることもあるよ」という言葉に背中を押されているのだ。日経エデュケーションチャレンジは、自分の学びたいことを見つめ直す大きな判断材料になった。なぜなら、私は、大学でディーセントワークの促進に向けて、障がい者就労の仕事の機会創出やダブルボトムライン促進のアプローチを研究したいと改めて実感したからだ。私の構想に様々なエッセンスを加え、自分のやりたいことに気づかせてくれた本イベントには感謝しきれない。そして、蟹江先生の「持続可能とは、誰もが取り残されない社会でないと実現できないこと」という言葉のように誰もが「この社会で暮らしていきたい」と歓迎することができる社会の実現に向けて奮闘していきたい。私は、先生方から教わった言葉を胸に、障がい者の就労に新風を吹かす人材になりたい。2030年、2050年と続く未来でも障がい者を含む誰もが活躍できる社会を創ってみせる。