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社会の最前線で活躍する企業人を講師に招き、全国の高校生に向けて企業の役割や社会課題の発見、実社会で感じる思いなどを発信するキャリア教育イベント「日経エデュケーションチャレンジ」が、8月1日、2日に開催された。23回目となる2023年のテーマは「持続可能な社会と私の未来」。各企業の社会課題に対する取り組み事例を題材に、一人ひとりが持続可能な開発目標(SDGs)を自分事として捉え、どのような社会を目指し、実現のためにどのように考え、どう行動に移していけばいいのか、熱のこもった授業が繰り広げられた。

開催報告

校長のメッセージ

校長

一條 和生
いちじょう かずお

IMD教授
一橋大学名誉教授

未来を作るのは若者だ SDGsの動きを世界でリードしているのはZ世代である皆さんだ。2日間の授業を通じて学んだ企業のSDGsに対する取り組みから、仕事の面白さとともに、SDGsを自分事として捉え、自分だったらどんなことができるかを考えてほしい。
 日本には世界に貢献できる素晴らしいテクノロジーがたくさんあり、創意工夫をして難題を乗り越える力がある。未来の社会のために小さな取り組みでもよいので、自分がやりたいこと、実現したいことを具体的な言葉にしてほしい。そして、リーダーシップを発揮して、わくわくできる未来の社会を実現してほしい。勉強は自分を輝かせるためにある。今回の授業が未来を考えるきっかけとなることを願っている。

UACJ

二兎追って二兎を得る?
アルミでかなえる、軽やかな世界

大町 奈央子氏

大町 奈央子
おおまち なおこ

UACJ

マーケティング・
技術本部 R&Dセンター
第二研究部
先端生産技術研究室 主査

トレードオフ問題は解決できる

 アルミ板の生産量で世界3位のシェアを誇るUACJ。日本のアルミ缶は90%以上がリサイクルされていて、二酸化炭素の排出量を抑制している。「リサイクルの輪を構築・持続するには、時代に合わせて多様な技術や制度を組み合わせることに加え、私たち消費者側の意識改革も必要」と、大町先生は語る。
 また、利便性と環境貢献、個人幸福と会社利益など、従来トレードオフ(一方の達成には他方の犠牲を伴う)と考えられてきた課題の解決にはデジタルトランスフォーメーション(DX)が鍵を握る。将来のありたい姿を描き、今すべきことを逆算していくバックキャスティングの考え方が大切だと説く。「自分にできることを考え、実行に移してほしい」とエールを送った。

日産化学

安全性を正しく評価することで
ものを創る

古川 賢氏

古川 賢
ふるかわ さとし

日産化学

企画本部 理事
アニマルケア企画
グループリーダー

ベネフィットとリスクを両立

 農薬、医薬品、化粧品などの原料を製造する日産化学。農学部獣医学科で毒性病理学と毒性学を学び、現在は新しい化学物質の安全評価を行う古川先生は安全評価の目的を「技術革新というベネフィットと、人体や環境へのリスクを両立させること」と語る。
 どんな物質でもゼロリスクはあり得ず、「犬にとってチョコレートは毒。ビタミンAにも、塩分にも毒性はある」という。毒性学の父パラケルススの言葉「すべての物質は毒であり、用量が毒と薬を区別する」を借りて、安全性は定性的ではなく、定量的な判断が必要だと強調した。
 安全性の正しい評価は、快適な未来、持続可能な社会の実現に不可欠な科学の進歩に貢献すると、自らの仕事の意義を語った。

奥村組

何を見て、何を感じ、どう行動するのか?
~災害に備える社会づくりの
これまでとこれから~

大塚 義一氏

大塚 義一
おおつか よしかず

奥村組

技術本部
環境技術専門部長

安全に住み続けられる町づくり

 総合建設会社である奥村組の大塚先生は「災害に備える社会づくり」の視点から授業を行った。災害時は道路を塞ぐがれきの撤去など、救護ルートの確保が喫緊の課題となる。東日本大震災では、災害廃棄物が大量に発生したが、そこにはアルバムなどの思い出の品が含まれ、ただのゴミではないと大塚先生は語る。
 一方で、迅速な復興には複数関係者との円滑な連携による早期処理が求められる。そのためクラウドを導入し、事業者間の連携を図ったという。
 東日本大震災では、過去の津波被害の教訓が町づくりに生かされなかった反省もあるという。処理システムの構築もそうだが、我々一人ひとりが「何を見て、何を感じ、どう行動するのか」が災害対策に重要なことを説いた。

テレビ東京

大切にします、ミライ
~テレビ局のサステナビリティとは?~

松丸 友紀氏

松丸 友紀
まつまる ゆうき

テレビ東京

アナウンサー

エンタメ総合商社としての役割

 松丸先生によれば、テレビ東京では、昨年にサステナビリティ委員会を設置し、スタジオの電球をLED電球に切り替えて消費電力を10分の1に削減したほか、ニュース番組ではスタジオ照明の明るさを抑え、カメラで調整するなどの工夫をしているという。
 また「池の水ぜんぶ抜く大作戦」はSDGs起点の番組ではないが、結果的に外来種の問題などにも関心を持ってもらう機会になっている。乳幼児向けの番組「シナぷしゅ」では、キャラクターの性差を色で区別しないなど、バイアスの排除に努めている。
 こうした身近な「気づいたらSDGs」なものに目を向けることが最も大切であり、幅広いジャンルを扱うテレビがその役目を担っていきたいと締めくくった。

ニッタ

不安100%!モノづくり現場での
新米営業 奮闘記。

中谷 沙惠氏

中谷 沙惠
なかたに さえ

ニッタ

工業資材事業部
ベルト事業グループ
営業部 大阪営業課

失敗を恐れずに立ち向かう

 創業138周年のニッタは、ベルト・ゴム製品など、多様な産業を支える産業資材メーカーだ。中谷先生は先輩社員とチームを組んで施策提案をした際の経験から、ポジティブに行動するための4つのポイントを紹介した。
 1つ目は「物事の捉え方は解釈で決まる」こと。納得感のある前向きな考え方が行動の原動力になる。2つ目は「行動してみる」こと。行動を通じて学ぶことは多い。失敗が許されるのは若手の特権である。3つ目は「失敗は将来のネタと考える」こと。行動に失敗はつきものであり、挑戦の証しである。4つ目は「自分流の不安との付き合い方を見つける」こと。「ノートに書き出すなど対処法の用意があると心の支えになる」とアドバイスを送った。

フクシマガリレイ

冷やすモノづくりから地球温暖化を
食い止める

新名 猛氏

新名 猛
しんみょう たけし

フクシマガリレイ

製造本部 部長

冷やすモノ作りで温暖化対策

 業務用冷蔵庫・ショーケースの製造販売を行なうフクシマガリレイ。新名先生は、環境負荷が小さい冷蔵庫の製造開発に携わっている。
 冷蔵庫を冷やす冷媒には長年フロンが使用されてきたが、オゾン層の破壊、地球温暖化の要因となる。そこで、ノンフロン冷媒の冷蔵庫を開発した。「フロンに代えて自動販売機や車にも使用されている冷媒を採用した。冷蔵庫は電気を使い続けるので省エネ性も重要になるため、構造面の見直しも行った」と語る。
 さらに、業務用冷蔵庫は火事を防ぐため、メンテナンス性も考慮しなければならない。問題解決には、固定観念にとらわれない発想が求められるという。「好きなことに果敢に挑戦し、新しい世界を切り開いてほしい」と結んだ。

フクダ・アンド・パートナーズ

暮らしを支える物流施設づくりで
共創し、豊かな社会へ

福田 哲也氏

福田 哲也
ふくだ てつや

フクダ・アンド・
パートナーズ

代表取締役社長

共創共生の防災型オフィスビル開発

 フクダ・アンド・パートナーズは、建築と不動産の専門サービスを提供しており、多くの物流施設づくりの実績を誇る。
 福田先生は東日本大震災で物流施設などの復旧に携わった経験から、電気と物資の重要性、そして物流は災害時に命を守るライフラインとなることを実感。その思いから、物流施設づくりの知見を生かし、平時は共創の場、非常時は地域密着の防災施設となるリバーシブルビル「仙台長町未来共創センター」を開発。産官学連携の下、再エネ活用、地域企業との防災連携などを実現している。今後も国土強じん化に符合した施設開発を目指し「経済合理性と社会貢献を両立できる仕組み作りに挑戦し『Social Innovation』を生み出していきたい」と、熱い思いを語った。

UACJ

二兎追って二兎を得る?
アルミでかなえる、軽やかな世界

大町 奈央子氏

大町 奈央子
おおまち なおこ

UACJ

マーケティング・
技術本部R&Dセンター
第二研究部
先端生産技術研究室 主査

トレードオフ問題は解決できる

 アルミ板の生産量で世界3位のシェアを誇るUACJ。日本のアルミ缶は90%以上がリサイクルされていて、二酸化炭素の排出量を抑制している。「リサイクルの輪を構築・持続するには、時代に合わせて多様な技術や制度を組み合わせることに加え、私たち消費者側の意識改革も必要」と、大町先生は語る。
 また、利便性と環境貢献、個人幸福と会社利益など、従来トレードオフ(一方の達成には他方の犠牲を伴う)と考えられてきた課題の解決にはデジタルトランスフォーメーション(DX)が鍵を握る。将来のありたい姿を描き、今すべきことを逆算していくバックキャスティングの考え方が大切だと説く。「自分にできることを考え、実行に移してほしい」とエールを送った。

日産化学

安全性を正しく評価することで
ものを創る

古川 賢氏

古川 賢
ふるかわ さとし

日産化学

企画本部 理事
アニマルケア企画
グループリーダー

ベネフィットとリスクを両立

 農薬、医薬品、化粧品などの原料を製造する日産化学。農学部獣医学科で毒性病理学と毒性学を学び、現在は新しい化学物質の安全評価を行う古川先生は安全評価の目的を「技術革新というベネフィットと、人体や環境へのリスクを両立させること」と語る。
 どんな物質でもゼロリスクはあり得ず、「犬にとってチョコレートは毒。ビタミンAにも、塩分にも毒性はある」という。毒性学の父パラケルススの言葉「すべての物質は毒であり、用量が毒と薬を区別する」を借りて、安全性は定性的ではなく、定量的な判断が必要だと強調した。
 安全性の正しい評価は、快適な未来、持続可能な社会の実現に不可欠な科学の進歩に貢献すると、自らの仕事の意義を語った。

奥村組

何を見て、何を感じ、どう行動するのか?
~災害に備える社会づくりの
これまでとこれから~

大塚 義一氏

大塚 義一
おおつか よしかず

奥村組

技術本部
環境技術専門部長

安全に住み続けられる町づくり

 総合建設会社である奥村組の大塚先生は「災害に備える社会づくり」の視点から授業を行った。災害時は道路を塞ぐがれきの撤去など、救護ルートの確保が喫緊の課題となる。東日本大震災では、災害廃棄物が大量に発生したが、そこにはアルバムなどの思い出の品が含まれ、ただのゴミではないと大塚先生は語る。
 一方で、迅速な復興には複数関係者との円滑な連携による早期処理が求められる。そのためクラウドを導入し、事業者間の連携を図ったという。
 東日本大震災では、過去の津波被害の教訓が町づくりに生かされなかった反省もあるという。処理システムの構築もそうだが、我々一人ひとりが「何を見て、何を感じ、どう行動するのか」が災害対策に重要なことを説いた。

テレビ東京

大切にします、ミライ
~テレビ局のサステナビリティとは?~

松丸 友紀氏

松丸 友紀
まつまる ゆうき

テレビ東京

アナウンサー

エンタメ総合商社としての役割

 松丸先生によれば、テレビ東京では、昨年にサステナビリティ委員会を設置し、スタジオの電球をLED電球に切り替えて消費電力を10分の1に削減したほか、ニュース番組ではスタジオ照明の明るさを抑え、カメラで調整するなどの工夫をしているという。
 また「池の水ぜんぶ抜く大作戦」はSDGs起点の番組ではないが、結果的に外来種の問題などにも関心を持ってもらう機会になっている。乳幼児向けの番組「シナぷしゅ」では、キャラクターの性差を色で区別しないなど、バイアスの排除に努めている。
 こうした身近な「気づいたらSDGs」なものに目を向けることが最も大切であり、幅広いジャンルを扱うテレビがその役目を担っていきたいと締めくくった。

ニッタ

不安100%!モノづくり現場での
新米営業 奮闘記。

中谷 沙惠氏

中谷 沙惠
なかたに さえ

ニッタ

工業資材事業部
ベルト事業グループ
営業部 大阪営業課

失敗を恐れずに立ち向かう

 創業138周年のニッタは、ベルト・ゴム製品など、多様な産業を支える産業資材メーカーだ。中谷先生は先輩社員とチームを組んで施策提案をした際の経験から、ポジティブに行動するための4つのポイントを紹介した。
 1つ目は「物事の捉え方は解釈で決まる」こと。納得感のある前向きな考え方が行動の原動力になる。2つ目は「行動してみる」こと。行動を通じて学ぶことは多い。失敗が許されるのは若手の特権である。3つ目は「失敗は将来のネタと考える」こと。行動に失敗はつきものであり、挑戦の証しである。4つ目は「自分流の不安との付き合い方を見つける」こと。「ノートに書き出すなど対処法の用意があると心の支えになる」とアドバイスを送った。

フクシマガリレイ

冷やすモノづくりから地球温暖化を
食い止める

新名 猛氏

新名 猛
しんみょう たけし

フクシマガリレイ

製造本部 部長

冷やすモノ作りで温暖化対策

 業務用冷蔵庫・ショーケースの製造販売を行なうフクシマガリレイ。新名先生は、環境負荷が小さい冷蔵庫の製造開発に携わっている。
 冷蔵庫を冷やす冷媒には長年フロンが使用されてきたが、オゾン層の破壊、地球温暖化の要因となる。そこで、ノンフロン冷媒の冷蔵庫を開発した。「フロンに代えて自動販売機や車にも使用されている冷媒を採用した。冷蔵庫は電気を使い続けるので省エネ性も重要になるため、構造面の見直しも行った」と語る。
 さらに、業務用冷蔵庫は火事を防ぐため、メンテナンス性も考慮しなければならない。問題解決には、固定観念にとらわれない発想が求められるという。「好きなことに果敢に挑戦し、新しい世界を切り開いてほしい」と結んだ。

フクダ・アンド・パートナーズ

暮らしを支える物流施設づくりで
共創し、豊かな社会へ

福田 哲也氏

福田 哲也
ふくだ てつや

フクダ・アンド・
パートナーズ

代表取締役社長

共創共生の防災型オフィスビル開発

 フクダ・アンド・パートナーズは、建築と不動産の専門サービスを提供しており、多くの物流施設づくりの実績を誇る。
 福田先生は東日本大震災で物流施設などの復旧に携わった経験から、電気と物資の重要性、そして物流は災害時に命を守るライフラインとなることを実感。その思いから、物流施設づくりの知見を生かし、平時は共創の場、非常時は地域密着の防災施設となるリバーシブルビル「仙台長町未来共創センター」を開発。産官学連携の下、再エネ活用、地域企業との防災連携などを実現している。今後も国土強じん化に符合した施設開発を目指し「経済合理性と社会貢献を両立できる仕組み作りに挑戦し『Social Innovation』を生み出していきたい」と、熱い思いを語った。

特別セッション

特別講師

蟹江 憲史
かにえ のりちか

慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科
教授

SDGsは未来の常識になる SDGsには17の大きな目標があり、その実現に向けた169の具体的な目標が掲げられている。持続可能な社会にするために当たり前のものばかりだが、達成が可能と思われている目標はごくわずかだ。特に環境、平等な社会を作る公平性において、目標達成にはパラダイムシフト(常識とされてきた見方や価値観の劇的な変化)が必要だといわれている。
 何が変化のテコとなるのだろう。世の中の仕組みの変化か、行動の変化か、あるいは技術だろうか。課題の解決には柔軟な発想で既存の制約を外して考えてみることが大事で、それがSDGs的な発想法といえる。17の目標はすべてつながっていて、皆さんが生きていく世界の常識となる。ぜひ楽しみながら自由な発想でSDGsを考えてみてほしい。