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LECTURE188  2018 April

【インタビュー】
kay me代表 毛見純子さん

働く女性を応援したい 華やかで楽な洋服作る

毛見さん
キャリア女性の仕事着選びは案外難しい。そんななか注目を集めるのが、ストレッチ素材だけで作るアパレルブランド「kay me」だ。「働く女性を応援したい」と語る代表の毛見純子さんに、起業のきっかけや事業にかける思いを聞いた。

起業の原点は祖母への憧れ 東日本大震災機に事業化


 ――経歴と起業を決意したきっかけを教えてください。

 毛見 起業の原点は生まれ故郷、大阪で呉服屋を営んでいた祖母です。女性が自らの才覚で事業を切り盛りし、ポジティブに何でもやり、「昨日決めたことを、翌日すぐに実行する」姿に憧れました。たとえ失敗しても誰かのせいに全くしない人でした。「30歳までに会社を創ろう」と心に決めました。

 大学卒業後、ベネッセコーポレーションで営業とマーケティング、その後ボストンコンサルティンググループなどで経営戦略コンサルタントを経験。そして2008年、マーケティングコンサルタント会社を立ち上げ代表に就任しました。「働く女性を笑顔にするような仕事をしたい」思いはずっとありましたが、その時点では一生のテーマとなる具体的な事業が決め切れなかったため、まずはコンサル会社として独立しました。

 ――その後に、アパレル事業「kay me」を立ち上げました。

 毛見 11年3月11日、東日本大震災が起きたとき私は名古屋市におり、翌日帰京するため、岐阜羽島のビジネスホテルに泊まりました。そんな非常事態の中で思ったのが、「本当にしたいことをしよう」「やはり働く女性を応援したい」「手触りがあって、300年残る事業がしたい」ことでした。さらに私自身が営業や会食時の洋服選びに悩んだこと、家で洗濯でき忙しい朝でも一瞬でコーディネートが完成する洋服が欲しいこと――など全部がつながり、その日の夜に「ジャージー素材のワンピースの会社を創ろう」と決意しました。

 帰京後は即行動に移しました。マーケティングコンサルタントが本業なのでそのメソッド通り、東京・有楽町の百貨店など3店舗をスタッフと手分けして回り、自分が理想とする伸縮性のある素材で、洗えて、仕事に使え、手ごろな価格のワンピースをリサーチしました。その結果、そうした商品がほとんどないことがわかり、自分でやることにしました。SNS(交流サイト)でつぶやいたり、知人のつてをたどったり、取引先まで次々に巻き込んで4カ月で事業化にこぎつけました。

伸びる素材で肩こり知らず 楽しい気分で創造性向上も


 ――働く女性のためのブランドにこだわる理由とは。

 毛見 キャリア女性は仕事服選びに悩んでいます。いまだ長時間働くことが多い世の中ですが、伸縮性のあるジャージー素材のワンピースは、長時間座っていてもシワになりにくく、肩がこらない着心地の良さが特徴です。華やかな柄物もラインアップしています。着ていて楽しい気分になれば、仕事の創造性も上がると思います。

 メード・イン・ジャパンにもこだわっています。理由の1つは、日本の縫製・素材産業を後世に継承したいという思いからです。現在、日本で流通する衣料品の国産比率はわずか3%に過ぎません。その現状に歯止めをかける一助となりたい。もう1つは、日本の正確性や細かさなどを再認識したためです。「kay me」の品質を隅々まで担保するためには、日本の協力工場の技術力が不可欠です。

 今はアパレル事業だけですが今後、女性を応援するためのアイテムやサービスを拡充し、出会いの場も作っていきます。世界中の挑戦する女性を応援していきたいと思います。

 ――印象に残るエピソードは。

 毛見 小売り、在庫を抱える商売、アパレル、どれを取っても未経験でした。中小企業とはいえ、素材の企画・開発やデザイン、店舗開発、プロモーション、カスタマーセンター、総務・経理、コーポレートサイト、ECサイト構築まで一通り必要です。それぞれの分野に精通した人にどう出会うかが課題でした。多くの仲間の協力を得て、組織を築きました。

 また、多様性のカルチャー創りも課題でした。出身業界の違いに加え、スタッフの5分の1は外国人で、それぞれの感覚の違いを理解したうえで、リーダーシップを取ることが求められます。日本人も含めた組織形成の奥深さを毎日楽しんでいます。

 ――働く女性を取り巻く環境は、今後どのように変化していくと考えますか。

 毛見 様々な事情によりフルタイムで働くことが難しい女性を戦力化するためには、企業には柔軟な対応が求められます。当社では社員との面談時に「カスタマイズ雇用契約書」を個別に作り、意欲と能力がある人にはたとえ短時間でも働いてもらう仕組みを作っています。今後、育児や介護などのライフステージの変化により働き方は変わらざるを得ません。「いつかは我が身」と考えられれば、同僚同士の理解も深まるはずです。このことは女性だけでなく男性にもいえると思います。


毛見さん2

一歩踏み出すことが大事 自分の技でお金稼ごう


 ――丸の内キャリア塾読者に対してメッセージをお願いします。

 毛見 2つあります。1つは「未経験でも一歩踏み出すこと」。今はSNSでつぶやけば、誰かが「知っているよ」「紹介しようか」と言ってくれる時代です。本当にしたいことがあるなら能動的に行動し、チャンスをつかみましょう。もう1つは「自分の技でお金を稼ぐこと」。ハンドメード作家や税理士、身近なところでは片づけの技術などなんでもいいのです。個人的な技で現金を得ることで、何か違う事業の立ち上げや転職にも役立つと思います。



毛見純子(けみ・じゅんこ)さん
kay me代表

大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、ベネッセコーポレーション、ボストンコンサルティンググループなどを経て、2008年マーケティングコンサルタント会社設立。11年アパレル事業「kay me」開始。現在、リードデザイナーも務める。

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