大学の約束2019 “2030年”への共創カンファレンス大学の約束2019 “2030年”への共創カンファレンス
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参画大学:関西学院大学/成蹊大学/中央大学/東京工業大学/豊田工業大学/早稲田大学(五十音順)
「Society 5.0」社会で
求められる
人材教育の現在地と未来像
社会が大きく変化している今、デジタルテクノロジーも急速な進化を遂げている。AIやIoTなどの進化に伴い、世界は「Society 5.0」社会に向けて大きく歩み始めている。日本経済がこうした変革に挑み、今後も持続的に成長していくためには、いかに「新しい価値の創造やイノベーション」を生み出していくかが喫緊の課題となっている。
Society 5.0社会に求められる人材育成について、大学と企業はどのように取り組んでいるのか。これから社会で活躍する学生たちは、どのように感じているのか。2019年12月5日、都内で行われたセッションの模様を紹介する。
矢印
学生セッション
未来を創る人材は、今、何を学んでいるのか
カンファレンス写真
曽和利光氏
曽和利光
人材研究所 代表取締役社長

大学では理系に偏らずに文系の人の意見も取り込める環境が
ほしいと考えた

曽和利光氏
曽和利光
人材研究所 代表取締役社長

曽和 本日のテーマをシェアするにあたり、次の3つの質問を用意した。「入学動機」「大学・大学院で何を学んだか、一番自分を成長させた学びとは」「これから社会に対する使命感」。まず1つ目から教えていただきたい。

宇治 関西学院高等部から内部進学したのだが、理工学部を選んだ理由は2つ。1つは、ICTで世界を変えたいと思ったこと。子どもの頃に見た映画「アイアンマン」の影響もあるが、自分の力で技術を活用して世界を変えたいという強い思いがある。もう1つは、高校生の時から理工学部の先生と交流があり、この先生の下でなら自分の思いを実現できると思ったこと。

内田 様々な人と触れ合い、理系に偏らずに文系の人の意見も取り込める環境がほしいと考え、ワンキャンパスで文理融合の成蹊大学に魅力を感じた。大学では将来、社会に出てから使える知識としてAIに着目し、情報科学科を選択した。

合田 大学では土木工学を専攻し、現在は土砂・流木災害について研究している。きっかけは、私が生まれた年に起きた阪神・淡路大震災。世のため人のために社会基盤をつくる土木技術者を志し、中央大学を志望した。

細田 一橋大学商学部から東工大の環境・社会理工学院に進学したが、そもそものきっかけは東日本大震災。人々の記憶が風化し、亡くなった方々が忘れられていくことに恐ろしさを感じた。マーケティングにおける量的なデータ分析だけではとらえきれない人々がいることが分かり、こうした人々を見ていくために情報社会論を研究したいと考え、東工大に進学した。

登壇者
宇治 槻氏
宇治 槻
関西学院大学大学院 理工学研究科情報科学専攻 修士2年
内田和宏氏
内田和宏
成蹊大学 理工学部情報科学科 4年
合田明弘氏
合田明弘
中央大学大学院 理工学研究科 都市人間環境学専攻 修士2年
細田恵雅氏
細田恵雅
東京工業大学 環境・社会理工学院 社会・人間科学系 社会・人間科学コース 修士1年
多田太隆氏
多田太隆
豊田工業大学大学院 工学研究科先端工学専攻 修士2年
井上一磨氏
井上一磨
早稲田大学大学院
創造理工学研究科
修士2年

多田 豊田工業大学を志望した理由は主に3つ。通っていた塾の講師が豊田工業大学の学生で人間的にも能力的にも尊敬していたこと。次に「ものづくり」が好きだったことから、日本の産業界をけん引するトヨタ自動車が運営する大学で最先端の知識を学びたかった。3つ目が、高校時代に「通学通勤時間は金額に換算すると相当な損失になる」という記事を読み、大学が自宅から徒歩5分圏内だったこともあり進学した。

井上 早稲田祭に行って学生の多さに驚き、「これだけの人がいれば多様性が学べる」と思い、学際的な社会科学部を志望した。データマイニングを学び、データ分析を行っていくうちに、「もっとアルゴリズムの中身やAIを学びたい」「改善をしていくことで実社会に役立てたい」という思いが強くなり、理工学部大学院に進学した。

他者と触れ合い、理解することが自分の成長につながる

曽和 次に大学、大学院で学んだことと、大きな影響を受けた経験を教えていただきたい。

宇治 プログラミング教育のプロジェクト。理工学部と教育学部の学生が協力して教材やカリキュラムを作成し、関西学院初等部から高等部の学生と共に進めた。一人ひとりに得意不得意があり、学校や年代、学部の壁を超えた活動から人の個性を見極める教育についても学べたことが貴重な経験になった。

曽和 高校生とチームを組んで小学生に教えるプロジェクトは珍しいと思うが、この経験から得たものとは。

宇治 文系理系、学校、年代、言語の壁を越えた活動から、一人ひとりに得意不得意があり、人の個性を見極めて大きなプロジェクトをマネジメントしていくことの重要性も学んだ。例えば、小学生は未熟かと思っていたが、奇想天外な発想が次々飛び出してくるのを目の当たりにし、役割を設定することで子どもの能力を発揮させることができるという気付きは貴重な発見だった。
ところで皆さんは、どのように研究テーマを決めたのか?

合田 入学してすぐの授業で「中央大学は日本を動かす人材をつくる。君たちもそういう人材になってほしい」と教授に言われ意識が大きく変わった。土木技術者としての責任を持って、世のため人のために働いていきたいと覚悟が決まった瞬間だった。今最も関心のあるテーマは、流木による河川の氾濫拡大の問題。この研究を通して森林研究の専門家の方とも出会うことができ、土木分野とは違う視点や考えを得ることができている。人間は一人では何もできない。これまでの様々な人たちとの出会いが自分を成長させてくれ、今の自分を形づくっていると感じている。

多田 学部生の頃に行った企業のインターンシップ期間中、その会社の寮で3週間暮らし、周囲の騒音に悩まされたのが研究のきっかけになった。コストをかけずに吸音性能の高い吸音材の研究に取り組み、学会で賞をもらった。自分のやりたい研究を後押ししてくれる豊田工業大学を進んだことは正しい選択だったと思う。

内田 「丸の内ビジネス研修」に選抜されて課題解決力を身に付けられた。「企業価値を向上するための施策は何か」という課題を5人のチームで取り組んだ。文系と理系の学生の間で意見が分かれ、多様な考えがあることを知り、自分の視点・観点も広がったことは大きな収穫だった。

合田 文理融合といっても中央大学は学部が地理的に離れているため、自分から手を伸ばさないと機会が得られない。価値観が異なる理系文系が交わったときに新しいモノや価値が生まれる。大学側もその部分を考慮すべきではないか。

多田 文理融合でモノゴトをすすめるには難しい点もあるのではないか。

内田 意見が拡散し過ぎて、まとめるのに時間がかかった点。例えば売れていない商品があった場合、理系は売れない理由を改善しようとロジカルに考えるが、文系はアイデア先行になる。

細田 理系は技術寄りで採算の視点に欠けることはよくあるし、文系は暴走することもある。最後は、お互いへの信頼感なのかもしれない。

多田 成長した学びについて言いたいことが2つある。1年次に全寮制で過ごしたが、「見える化」の大切さを学んだ。それぞれ違う環境で育ってきた人間が暮らすので、ルールを決め、全員が見えるように紙に書いて貼り出すのが有効だった。これは実際の研究でも役に立った。
2つめは「修士海外学外実習」。2カ月間、海外の研究機関でインターンシップを行うプログラムだが、主体的に行動しなければならず、自身の研究内容を紹介するレジュメを英文で作成し、50通のメールを送り、最終的にオーストラリアのキャンベラにあるニューサウスウェールズ大学に受け入れてもらうことができた。関係する研究をより専門的に行っている海外の研究機関を論文などからたどりアプローチしないと自分の研究が進まない事情があったので、がんばれたと思う。

細田 東工大は理系の単科大学だが、文系の教養科目が充実している。海外との交流も盛んだ。最近、「リーダーシップ教育院」ができ、世界中の国の学生が学んでいる。彼らと交流することで、日本人にはないその国の文化や、それぞれの視点の違いに直面し、多くを学ぶことができた。

「世の中、捨てたものじゃない」と思えるような世界をつくりたい

曽和 最後に、社会に出たときに解決したい課題、これから研究したいテーマ、将来の抱負を宣言してほしい。

宇治 AIも含めてICTを活用することで、すべての人が自分のやりたいことに専念し、それぞれの能力を最大限発揮して活躍できる世界をつくりたい。

内田 より豊かな環境の中で働けるように、IoTを用いて教員の労働環境を改善したい。

合田 近年、洪水災害が毎年のように発生しており、将来は気候変動により洪水外力が増加すると言われている。洪水災害の犠牲者を最終的にゼロにするのが目標。

細田 歴史の狭間で砂をすくったときに手からこぼれ落ちて忘れられてしまうような人々に光を当てたい。そうした人たちが「世の中、捨てたものじゃない」と思える世界をつくりたい。

多田 国民の過半数がストレスを感じている現代日本のストレス問題を解決したい。狭い国土の中、人と人が心地良い距離感でいられる社会をつくりたい。

井上 日本は世界で最も少子高齢化が進んでいる国。学んだAI技術と機械学習の知識を用いて、介護問題や人材不足などを解決していきたい。

セッションを終えて
このセッションでは、学生が自分の学んでいることと、それを社会へどうつなげていくかというテーマで行ったのですが、最初はどこまで学生の皆さんが社会を意識しているかは心配でした。私自身のことを思えば、何も考えていなかったなと。しかし、参加した学生の皆さんは早い方では入学時から将来の社会や産業界での活躍を見据えて学びを行なっており、それをうまく各大学がサポートするようなプログラム、機会を提供しているのに驚きました。しかも、途中から学生同士で相互に質疑応答をしあうようになり、異分野間の融合・共創という未来が少し透けて見えた気がしました。
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