日本経済新聞 関連サイト

特集/企画

丸キャリロゴ

LECTURE201 2019 July

丸の内キャリア塾とは、キャリアデザインを考える女性のための実践的学習講座です。毎回、キャリアやライフプランに必要な考え方と行動について多面的に特集しています。

【インタビュー】

決断重ね、切り開く
女性を輝かせるメイクアップ道

現在、ヘア&メイクアップアーティストとして活躍する長井かおりさん。ここまでの道は迷いや葛藤の連続で、その都度「本当にやりたいことをやろう」と決断し、突き進んできたという。そんな長井さんに仕事への向き合い方や、つややかな印象になるスキンケアと時短で映えるポイントメイクのこつを聞いた。

長井さん

ヘア&メイクアップアーティスト
長井 かおり(ながい・かおり)さん

雑誌、広告、映像など幅広いジャンルで、モデルや女優のヘアメイクを手掛ける。わかりやすく、効果的なメソッドで女性ファッション雑誌、美容雑誌でのビューティー企画で人気を博し、著書のメイク本も累計20万部の大ヒットとなっている。

――化粧品会社で社会人のスタートを切るまでは、ほとんどお化粧をしたことがなかったそうですね。

 長井 学生時代はメイクに全く縁がなく、ひたすらバレーボールに打ち込んでいました。高校卒業後は体育短大に進み、体育教師になれたらいいなと漠然と考えていました。しかし就職活動時期に、自分が心からしたい仕事は何か、進路に悩み始めます。考えに考えた結論は「多くの人と接する仕事をしたい」でした。フィットネスクラブのようなサービス業や販売業など、自分の力を試せて、接客に携われる一般企業に就職しようと思い立ったのです。
 そんな中、たまたま化粧品会社が販売員を募集していたので話を聞きにいってみると、デパートで化粧品を販売する美容部員でした。研修制度も充実している会社で、メイクについて何も知らなかった私のような新人たちを研修所で1カ月間、一から教え、育ててくれました。

――実際にデパートの売り場に立っていかがでしたか。

  長井 来てくださるお客様に丁寧に接したいという思いがあり、喜んでもらえた手応えを感じるときはやはり楽しかったですね。
 でも、美容部員というのは当然、化粧品の販売が一番の職務です。販売成績が上がってきてうれしい半面、自分がこれから試していきたい接客の方向性との微妙なずれに、葛藤が始まります。「もっと自由にお化粧の可能性を追求したい」「お客様が最高に輝ける提案をしたい」と思う気持ちの方が強くなっていきました。
 いろいろな思いが芽生える中、当時父が亡くなったことが人生の転機になった気がします。「いつ、何が起こるか分からない。本当にやりたいことを今やろう」と決断しました。

メイクアシスタントに転身
ブライダルの現場で技磨く

 ――メイクを施すことが「本当にやりたいこと」だったのですね。

長井 はい。メイクアップアーティストのアシスタントをしながら美容学校に通い、メイクを新たに学び直しました。その後、ヘアメイク事務所に入り、学びながら現場に出してもらいました。ブライダルの仕事を多く持つ事務所で、ミシュランの星付き高級レストランでのウエディングがメインでした。
 レストランウエディングがはやり始めた時期で、お客様は評判のよい担当者を指名します。指名されることは光栄ですが、プレッシャーもありました。1日1組を担当し、一日中花嫁に付いてちょっとした直しもその都度即座に対応、そんなこだわりのヘアメイクが求められました。花嫁は自分より年上の方が多く、上質なサービスとは何かをよくご存じです。目の肥えた人たちに自分の技術を認めてもらうために、細やかなヘアメイクの研究や工夫を心掛けました。涙や汗でマスカラなどのアイメイクがにじんで「パンダ目」になってしまうのを防ぐ方法を編みだしたのもこの頃です。
 喜んでもらえると自信や励みになり、ますます頑張る。すると指名が増える。1年先の予約も入るようになりましたが、仕事量の多さから体調管理が難しくなりました。一方、ブライダルメイクの分野では自分としてできることは全て提供できたのではという達成感がありました。

長井さん2

 ――それでフリーランスとして独立したのですね。個人になって仕事へのモチベーションは変わりましたか。

  長井 30歳での再スタートでした。事務所を辞めるということはそこでの仕事は置いていかなければなりません。人間関係も全て構築し直しです。「誰にも負けないで戦っていくんだ」と覚悟を決めてフリーの世界に飛び込みました。独立してからは人生で初めて自分の力だけを頼りにがむしゃらに突き進んできたように思います。
 やりがいの感じ方も年月を経て変わってきたと実感します。フリーになって間もない頃は、やりたいと思っていた仕事が自分に巡ってくることがただただうれしかった。その時期が過ぎると、自分の仕事が少しでも人の役に立ったと思えたときにやりがいを感じるようになりました。ヘアメイクを担当したお客様やメイクアップイベントの参加者が「ありがとう」「来てよかった」と笑顔を見せてくれるのが、今、何よりの喜びです。

正しいスキンケアを提唱
自然なツヤのある肌へ

 ――数多くの肌を見てきた長井さん。女性にはどのような肌であってほしいですか。

 長井 潤っていて、自然なツヤのある肌であってほしいですね。みずみずしい印象を与え、素敵だと思います。昔から日本人は白い肌への憧れが強く、根強い「信仰」があるのですが、私は、一番に目指すべきはツヤのある肌だと考えています。

  ――どうすれば魅力的なツヤが出るのでしょう。

  長井 ベーシックなスキンケアが全てといっても過言ではありません。化粧水をたっぷりつけることに始まり、きちんと乳液をつける。理想を言えば、化粧水はまずミストタイプ、その後に保湿力の高いローションの2種類を使い、美容液をつけてから乳液の手順です。化粧水、乳液ともに使用量は規定量より多い方がよいですし、顔全体に塗りこぼしがないように、くまなく塗り広げることが大切です。塗り方にむらがあると、せっかくのツヤが「テカリ」に見えてしまうからです。

   ――ツヤ肌を生かして、最短の時間でよりよく見えるメイクの方法を教えてください。

長井 UVケア入りの乳液でスキンケアを終えたらベースはそれで充分です。ファンデーションはリキッドやクリームのタイプを使用しましょう。目の下からこめかみまでの「美肌ゾーン」だけにファンデーションをたっぷり乗せて、スポンジでスタンプを押すように、トントンと垂直に優しくたたいてなじませます。この部分にファンデーションを置くだけで肌が整った印象になるので、その他の部分はスポンジに残ったファンデーションを薄く伸ばす程度でOKです。その上にフェイスパウダーを軽く乗せましょう。メイクを固めて、化粧持ちがよくなります。
 眉の薄さが気になるならば眉毛の隙間をアイブロウパウダーなどで埋めます。あとはチークと口紅があればOK。チークは血色感を出してくれ、表情を明るくしたりハリ感を引き出す効果があるので、ぜひ入れてほしいです。  チークと口紅の併用ができるマルチコスメと呼ばれるものもあるので、時短にはこのようなアイテムを使うのもよいですね。  「メイクに臨む気持ち」は仕上がりを左右します。忙しくても慌てずに、落ち着いた気持ちでメイクをしてくださいね。

    ――年齢を重ねても美しさを保つにはどうしたらよいですか。

 長井 そのときの肌にそのまま向き合うことが大事で、年齢を不安視する必要はないと思っています。私のメイク法はシンプルで、20代の人も80代の人も全く同じです。年齢を意識して「これをしなくてはだめ」などと無理に自分に課すことはありません。
 もちろん、ある程度美容に興味を持って勉強をしてほしいとは思います。今はそういう気持ちさえあれば情報は手軽に手に入ります。雑誌やインターネットなどで美容家たちが発信する情報を比較して、自分が受け入れやすいものを見つけたらサッと取り入れ、楽しみながら美容と向き合うのもよいでしょう。
 何より今を自分らしく生きることが美しさを保つためにも大切だと考えています。